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大地の女性たち

ガストロノミーを支える人々

スペインの料理学会「サンセバスチャン・ガストロノミカ」に参加した
WIG特別会員ルシア・フレイタスからの報告

サンティアゴ・デ・コンポステラのレストラン「ア・タフォーナ」のオーナーシェフ、ルシア・フレイタスが、新しいプロジェクト「アマ・ド・テラ(大地の女性たち)」を発表した。このプロジェクトは、キッチンの背後にあるすべてを担う女性たちにスポットライトを当てようとするもので、それを示すため、20人を超えるガリシア女性(ペルセベス採取者、農業者、魚貝類採取者、食堂の料理人、工芸家など)を学会のステージ上に招いた。「このステージで展開されるすべてのことの、本当の主役は彼女たちです」。

2022/10/04 「シエテ・カニバレス」より

世界的に注目される料理の学会「サン・セバスティアン・ガストロノミカ」初日、会議の流れが変わったのは、「大地の女性たち」のプロジェクトを紹介するルシア・フレイタスの発表の終盤だった。

「このプロジェクトはまだ開始していないのですが、ここでお見せしたかったのです。これは生命のプロジェクト、決して終わることのないものと思っています。『大地の女性たち』は私が進めているプロジェクトで、ここから、それぞれの女性たちの仕事を見せる小編をまとめて一連のドキュメンタリーを作りたい。これからずっと伝えていけるように。それが、彼女たちの声を残すための一つの方法だからです」。

ガリシア出身のシェフであるフレイタスは、彼女が尊厳を取り戻そうとしている職業にちなんで、それぞれ関連する4品の料理を発表した。

まず、魚介類採取者に捧げる、ベルベレッチョ(ザル貝)・トウモロコシのエスプーマ・タラのほぐし身の液状エンパナーダ。これはア・タフォーナの古典的メニューで、今回はパニプリ(球形の揚げ菓子)に入れて供された。

そして、ローストしたビーツの冷製ミネストローネ、紫キャベツのピクルスと塩ジェラート。これは農業者とアバストス・デ・サンティアゴ市場の女性たちを称えて。

一方、パン・コン・ナタ(薄いパンの皮とパンのジェラートにリベイラ・サクラの生クリームを添えたもの)は、牛乳生産者のために。

そして最後に、ガリシアの世界的詩人ロサリア・デ・カストロへの敬意を込めて、彼女が貧困の時代に作り、その詩にも登場するカルド・デ・グロリア(至福のスープ)。

《キッチンで起きるすべてのことの背後にいる女性たち》写真:ガストロノミカ2022

フレイタスは、第一次産業と女性のセクター(彼女のレストランの主なスタッフは女性)に対する感謝を示す発表を行い、「我々にはライトが当たっていますが、注目されるべき人々、それに値する人々に光が当たってよく見えるように、その向きを変えていかなければなりません。それが我々シェフの使命でもあります」と述べた後に、20人を超えるガリシア女性(工芸家、安価な食堂の料理人、ペルセベス採取者、農業者、主婦、魚介類採取者、工芸家、漁網職人、持続可能性を追求する生産者、市場の売り手、年金生活者、詩人…)をステージに登場させ、この女性たちを「私の店や他のすべてのレストランの料理の本当の主役、そして本当のミシュランの星であり、この国のガストロノミーを支える女性たちです。ガリシアの各地から来てくれたこの方々の毎日の仕事のおかげで、私たちは料理ができるのです」と紹介した。

クルサール国際会議場の聴衆から、一斉に拍手が起こった。フレイタスは感動を顕わに拍手し、「彼女たちは、この拍手に値する方々です、全てこの方々のおかげです、ありがとう」という言葉で発表を締めくくった。ガストロノミカ2022は敬意をもって始まり、尊厳が回復された。

その後、フレイタスはガストロノミー専門誌「シエテカニバレス」に対して、「『大地の女性たち』プロジェクトでは、この女性たちの知識や働き方、仕事のやり方を集積しようとしています。これまで科学的根拠なしに、ただ長年の積み重ねと、世代から世代へと継承された知識によって、私たちがキッチンで作るすべてを支えてくれてきたのです」と語り、「彼女たちと知り合い、その背景の中でお互いに影響し合うことができたという事実そのものが、非常に実り多いものであり、彼女たちが声を上げ、受け継いできたものを生き生きとした形で残すことができるようにすることが、正当であり当然のことだと思います」と説明した。

発表中のルシア・フレイタス 写真:ガストロノミカ2022

この参加メンバーのうち何人かは、何年も前から一緒に仕事をしており、毎日のような付き合いである。ピラールさんについては「彼女とはほとんど毎日話しています、彼女と私の菜園がどうなっているか。同じものを植えているのですから。また、世代交代の準備もしています、彼女が去ったときに娘さんが後を継げるように。私が援助できる方法は、彼女から買うことだけではなくて、娘さんが残ったときにもっと大規模な販売をするためには何ができるのかを考え、お母さんとは違った人生を歩めるように、ガストロノミー分野のようなセクターに身を置いて多くの手段を使えるよう応援していくことです。ピラールさんは1日4時間しか寝ないで、家のことや家畜、畑を切り盛りし、病気のおばさんの世話をして…農村の女性たちは皆、そうやって暮らしてきました。仕事を失ってほしくないし、マリシャさんがお母さんの来た道を続けて行くのを嫌だと思わないように、私たちに出来るのは、道を切り開こうとすることだけです。レタスを4個売るために働くのと、年間を通して毎週まとまった量を買ってくれる相手と密接な関係を持つこととは、全く別のことです」。

「必要なのは、シナジー(相乗効果)と養成のためのスペースです、新しい考え方を持つ人たちが、こういう女性たち、英知を備えた人たちの知識を分かち合うために、結束を固め、もっと平らな道を拓けるようになるように」とルシアは強調する。「だって、そうしなければ、耕す人は誰もいなくなってしまいます。パラダイムシフトはこれです:《現実を変えなければならない》」

翻訳:株式会社アセルカテ

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